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COPYRIGHT

著作権の部屋

「ネットで拾った画像を使ったら請求書が届いた」――そんなトラブルが増えています。イラスト・写真・デザインに潜む著作権リスクを、実例をもとにわかりやすく解説します。

WHY COPYRIGHT MATTERS

「知らなかった」で済まない時代

ウェブサイト、チラシ、SNS、パッケージ…ビジネスのあらゆる場面でイラストや写真を使う機会があります。ところが、その画像が誰かの著作物であることを意識しないまま使ってしまい、後から高額な請求を受けるケースが増えています。

著作権は、特許や商標と違い登録しなくても発生する権利です。イラストを描いた瞬間、写真を撮った瞬間に、自動的に著作権が生まれます。つまり、世の中のほぼすべての創作物には著作権があるのです。

こんなトラブルが実際に起きています:
・Google画像検索で見つけたイラストをチラシに使ったら、数年後に30〜50万円の請求書が届いた
・無料素材サイトからダウンロードしたイラストが、実は有料素材の転載だった
・従業員がネットから拾った写真を会社のウェブサイトに掲載し、撮影者から損害賠償を請求された

RIGHTS MAP

広告物のどこに、どんな権利がある?

チラシやウェブサイトを1つ作るだけでも、さまざまな著作権が関わってきます。

素材関わる権利注意点
メインビジュアル(写真・イラスト)著作権・肖像権・パブリシティ権最もトラブルが多い部分
キャッチコピー原則なし(例外あり)短すぎるフレーズは著作物に当たりにくい
本文(ボディコピー)著作権他社サイトの文章の転載はNG
商品写真著作権(撮影者に帰属)注文主ではなく撮影者が著作権者
ロゴ・商品名商標権・不正競争防止法著作権ではなく商標で保護
広告全体のレイアウト原則なし編集著作物として保護される可能性あり
ポイント:写真の著作権は撮影者に帰属します。「お金を払って撮ってもらったから自分のもの」ではありません。著作権の譲渡を受けるには、契約書で明確に定める必要があります。

STOCK IMAGE RISK

ネットの画像を使ったら請求書が届いた

ストックイラスト・写真の無断利用は、今もっとも多い著作権トラブルの1つです。

よくあるパターン

「無料だと思っていた」画像に高額請求

典型的な経緯

  1. ウェブ担当者(専門家ではない一般職員)が、チラシやウェブサイトの画像を探す
  2. Google画像検索や無料素材サイトで「よさそうな画像」を見つけて使用
  3. 実はその画像は有料ストックサービスの素材が転載されたものだった
  4. ストック素材の権利管理会社が、無断使用を検知
  5. あえて数年間放置し、年間利用料が積み上がった頃に請求書を送付
  6. 請求額は30万〜50万円程度

なぜ「放置」されるのか

権利管理会社は、無断使用を発見してもすぐには請求しないことがあります。使用期間が長くなるほど請求額が大きくなるためです。ウェブサイトに掲載したまま忘れていると、年月が経つほどリスクが膨らみます。

対策:自社のウェブサイトに掲載している画像・イラストの「著作権の棚卸し」を定期的に行いましょう。出所が不明な素材があれば、速やかに差し替えてください。

ストック素材サービスの選び方

サービスの種類メリットリスク
有料ストック(PIXTA等)利用条件が明確、権利保証あり費用がかかる。保証にも上限あり
利用条件明確な無料サービス(いらすとや等)無料で商用利用可能。条件が明確点数制限(いらすとやは1制作物20点まで)
条件不明確な無料サービス素材が豊富権利侵害の責任を一切負わないと明記しているサービスもある。転載素材が混在リスク
Canva等のデザインツール手軽にデザイン作成AI学習利用の同意条項あり。利用規約の確認が必要
実務的なアドバイス:最も安全なのは、有償のストックサービスを契約し、利用条件を確認した上で使うこと。もしくは、自社でオリジナルの素材を制作すること。「無料=リスクなし」ではありません。

INFRINGEMENT CRITERIA

「似ている」と「侵害」の境界線

参考にしたイラストに「似てしまった」場合、それは著作権侵害になるのでしょうか?裁判所は、以下の枠組みで判断しています。

翻案権侵害の判断枠組み(江差追分事件・最高裁平成13年6月28日判決)

既存の著作物に依拠し、表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現を修正等して、接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できる別の著作物を創作する行為

つまり、次の2点が問われます。

  1. 依拠性 — 元の作品を見て(参考にして)作ったか
  2. 類似性 — 元の作品の「表現上の本質的な特徴」が感じ取れるか

ここで重要なのは、「アイデア」は保護されないということです。「博士がガウンを着ている」というアイデア自体は誰でも使えますが、具体的な顔のつくり、体型のプロポーション、色使いなどの表現が似ていれば侵害になります。

侵害が認められた事例・認められなかった事例

侵害認定
猫イラスト事件(大阪地裁平成31年4月18日判決)

丸まって眠る猫を円形状に描いたデザイン。原告の水彩画を無断でテキスタイル(布地)に使用。原告イラストと構図・配色・フォルムの一致が認められ、侵害が認定されました。損害賠償:約167万円(使用料相当額122万円+著作者人格権侵害の慰謝料30万円+弁護士費用15万円)。

侵害認定
教材表紙イラスト事件(LEC出る順シリーズ事件)

立体的な人形のイラスト。肌色一色で表現し、A型の体型、手足を球状にデフォルメする等の特徴的な表現部分が共通していたため侵害が認められました。

侵害否定
博士イラスト事件(東京地裁平成20年7月4日判決)

博士が角帽をかぶりガウンを着た年配の男性のイラスト。「角帽+ガウン+髭+年配男性」はアイデア、顔の台形状のつくりはありふれた表現。両者は平面的/立体的と表現が異なり、侵害は否定されました。

侵害否定
釣りスタ事件(知財高裁平成24年8月8日判決)

GREEの「釣りスタ」とDeNAの「釣りゲータウン2」。「水中のみを描く」「同心円を表示する」「魚影で魚を表す」などはアイデアまたはありふれた表現にすぎず、著作権侵害は否定されました。

イラストを参考にする際の実務的ポイント:
  • 必ず複数のデザインを参考にする — 複数に共通する部分は「ありふれた表現」と認定されやすい
  • 顔の作り・表情は特徴とされやすい — ここは必ず変える
  • 画風やタッチ、色調だけを変えてもリスクは残る — 構図・フォルムこそ重要
  • 構図を大きく変える — ポーズ、画角、配置の変更が最も効果的

COPYRIGHT & CONTRACT

著作権と契約 — 「お金を払えば自分のもの」ではない

デザイナーやカメラマンに依頼して作ってもらったイラスト・写真。「お金を払ったのだから、自由に使えるはず」と思っていませんか?

実はそうではありません。著作権法上、著作権は最初に創作した人(クリエイター)に帰属します。お金を払ったからといって自動的に著作権が移転するわけではないのです。

契約で押さえるべき3つのポイント

1. 著作権の譲渡条項を明記する

譲渡を受ける場合は、「著作権法第27条及び第28条の権利を含む」と明記が必要です。この記載がないと、翻案権(改変する権利)や二次的著作物の利用権が譲渡されません。

2. 著作者人格権の不行使条項を入れる

著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権等)は譲渡できません。そのため、「著作者人格権を行使しない」旨の条項を入れるのが一般的です。

3. 第三者の権利を侵害していないことの保証

受け取ったイラストや写真が第三者の著作権を侵害していた場合に備え、納品物に第三者の権利侵害がないことを保証する条項と、万一侵害があった場合の責任の所在を明確にしておきましょう。

職務著作の例外:会社の従業員が業務として作成した著作物は、原則として会社に著作権が帰属します(著作権法第15条)。ただし、外部のフリーランスに依頼した場合はこの例外に当たりません。

QUOTATION

「引用」ならOK? — 著作権法第32条のルール

「引用だから大丈夫」という言葉を聞くことがありますが、引用として認められるには条件があります。

引用の判断要素(鑑定書写真掲載事件・知財高裁平成22年10月13日判決)
  1. 利用の目的 — 批評、報道、研究など正当な目的があるか
  2. 方法や態様 — 必要最小限の利用か、出典は明示されているか
  3. 著作物の種類や性質 — どのような著作物をどの程度利用しているか
  4. 著作権者への影響 — 著作権者の経済的利益を不当に害していないか

以前は「明瞭区別性」と「主従関係」の2要件が厳格に要求されていましたが、近年の裁判例では上記のような総合考慮で判断される傾向にあります。

ただし、ビジネスの場面では引用に頼るのは危険です。商品パッケージや広告に他人の著作物を「引用」することが正当化されるケースはほとんどありません。引用が認められるのは、あくまで批評・報道・研究といった目的の場合です。

FAQ

著作権に関するよくあるご質問

SNSに載っている画像を使ってもいいですか?
原則としてNGです。SNSに投稿された画像にも著作権があります。「公開されている=自由に使える」ではありません。使用する場合は、投稿者に許可を取る必要があります。
画像検索で見つけた写真をチラシに使うのは?
著作権侵害にあたる可能性が非常に高いです。Google画像検索の結果に表示される画像には、ほぼすべて著作権があります。有料ストックサービスの画像が転載されていることも多く、後から高額な利用料を請求されるケースが後を絶ちません。
フリー素材なら自由に使えますよね?
「フリー」の意味はサービスによって異なります。「いらすとや」のように利用条件が明確なサービスもありますが、中には「権利侵害に対して責任を負わない」と明記しているサービスもあります。利用条件を必ず確認してください。また、無料素材サイトに有料素材が無断転載されていることもあるため、出所の信頼性にも注意が必要です。
デザイナーに作ってもらったロゴ、自由に使えますか?
契約次第です。著作権は原則として作成したデザイナーに帰属します。自由に使うためには、著作権の譲渡を受ける契約が必要です。譲渡条項には「著作権法第27条及び第28条の権利を含む」と明記しましょう。
他社の商品パッケージに似たデザインを作りたいのですが…
著作権の問題に加え、不正競争防止法による商品形態模倣(デッドコピー)の問題もあります。競合他社の商品パッケージを参考にする場合は、構図・配色・フォルムを大きく変えることが必要です。詳しくはブランドを守る知財戦略のページもご覧ください。
著作権侵害の損害賠償はいくらぐらいですか?
ケースにより大きく異なります。イラストの無断利用の場合、使用料相当額(被告の販売額の一定割合など)に弁護士費用が加算される傾向です。例えば猫イラスト事件では合計約167万円の損害賠償が認められました。ストック素材の無断利用のケースでは、年間利用料の積み上げで30万〜50万円程度が請求されることが多いです。
AI生成のイラストに著作権はありますか?
AI生成画像の著作権については、2つの問題を分けて考える必要があります。

①AI生成物に著作権は発生するか
人間の「創作的寄与」がなければ著作権は発生しないと考えられています。単にプロンプト(指示文)を入力しただけでは、生成物に著作権は認められない可能性が高いです。ただし、プロンプトの工夫やAI出力の選択・加工に創作性が認められる場合には、著作権が発生する余地もあり、この線引きは今後の議論に委ねられています。

②AI生成物が他人の著作権を侵害するか
AI生成画像が既存の著作物に類似している場合、依拠性と類似性が認められれば著作権侵害となりえます。AIの学習データに含まれる著作物と類似した出力がなされた場合のリスクには注意が必要です。

この分野はまさに議論の最中であり、文化庁の検討会等でも活発に議論されています。ビジネスでAI生成画像を利用する場合は、リスクを踏まえた慎重な判断が求められます。

著作権のことでお困りですか?

「請求書が届いてしまった」「使っている素材が大丈夫か確認したい」そんなご相談も承ります。

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