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TRADEMARK CASES

「知らなかった」では
済まされない。

商標を登録していなかったために起きた、実際の事件と仮想事例をご紹介します。「うちには関係ない」と思っている方にこそ、読んでいただきたいページです。

Case 01 — 福岡のラーメン店名をめぐる紛争

元祖長浜屋事件

福岡地裁平成25年判決 飲食店 商標登録の重要性

福岡の「長浜ラーメン」は、その発祥の地で複数の店舗が類似した名前で営業しています。この事件は、元祖長浜屋の元従業員同士が独立開業した後に、店名をめぐって争いになったケースです。

何が起きたのか

元従業員Aが「長浜家」の名称で開業し、「長浜家」の商標登録を取得しました。その後、別の元従業員Bもよく似た名称で開業したため、Aが商標権侵害を主張して訴訟を提起しました。

結果的に、Bは以前にAとの間で使用許諾の合意があったことなどから請求は棄却されましたが、商標登録を先に取得したAが訴訟を主導できる立場にあった点が重要です。

この事件が示すこと

  • 同じお店で働いていた仲間同士でも、独立後は商標をめぐる紛争が生じうる
  • 商標登録を先に取得した者が、法的に有利な立場に立つ
  • 口約束や暗黙の了解は、紛争になったとき証明が困難
  • 「長浜ラーメン」のような人気業態ほど、名称の権利確保が重要

飲食店・個人事業主への教訓

日本の商標制度は「先願主義」(先に出願した人が優先される)です。どれだけ長くその名前を使っていても、先に出願した者が権利を持つことになります。

教訓:「昔から使っている名前だから大丈夫」は通用しません。お店の名前は、なるべく早く商標登録で守りましょう。特に、従業員の独立が多い飲食業界では、予防策として極めて重要です。
佐賀・北部九州の飲食店オーナーの皆さまへ:ラーメン店、居酒屋、カフェ、パン屋、お菓子屋…どんなお店も「名前」がブランドの核です。もし従業員が将来独立する可能性があるなら、早めの商標登録をお考えください。
Case 02 — グローバル企業でも起きた

iPad商標事件(中国)

中国 Apple社 調査不足

世界を代表するIT企業・Apple社でさえ、商標調査のミスで巨額の損失を被っています。

事件の経緯

2000年 — 中国企業が先に商標登録

中国の唯冠科技(Proview)社が、中国で「iPad」の商標を登録。Apple社がiPadを発売する何年も前のことでした。

2006年 — Apple社が関連会社経由で交渉

Apple社は、唯冠科技の台湾法人から「iPad」商標の譲渡を受けたと考えていましたが、中国本土の商標権は含まれていませんでした。

2010年 — iPad発売、しかし中国では…

iPadの中国販売が開始されましたが、商標権を持つProview社が販売差止めを請求。

2012年 — 和解金48億円

最終的にApple社は6000万ドル(約48億円)を支払って和解。

48億円(6000万ドル)

Apple社が中国でiPadの商標権を取得するために支払った和解金

なぜこうなったのか

  • 中国本土と台湾の商標権が別であることを見落とした
  • 商標権の譲渡交渉で、対象範囲を十分に確認しなかった
  • 事前の調査をしっかりしていれば、防げた問題
教訓:世界一の企業でさえ、商標の事前調査を怠れば48億円の損失。中小企業にとっても、出願前の先行調査は「保険」です。当事務所では、出願前に必ず先行調査を実施しています。

SIMULATION

九州の宅配寿司チェーンに突然の警告書 — 仮想事例

セミナーで使用している仮想事例です。佐賀や北部九州の中小企業を想定した、商標トラブルのリアルなシミュレーションをご紹介します。

仮想事例 — 肥前食品 vs 山秀商事

「かっぽうすし秀」事件

仮想事例(セミナー教材) 食品製造・宅配業 2640万円の損害賠償請求

登場人物

肥前食品株式会社(佐賀市):宅配寿司チェーンを展開。社長の秀島さんが、テイクアウト寿司の新ブランド「かっぽうすし秀」を立ち上げ。

山秀商事:首都圏でカウンター寿司店「すし秀」を展開する会社。「すし秀」を商標登録済み。

事件の流れ

新ブランドの企画・販売開始

肥前食品が「かっぽうすし秀」ブランドのテイクアウト寿司を企画。商標調査をせずに販売を開始。北部九州で大ヒットし、年間売上8000万円を記録。

突然の警告書が届く

山秀商事の弁護士から内容証明郵便で警告書が届く。「『かっぽうすし秀』は、弊社の登録商標『すし秀』に類似する。直ちに使用を中止し、損害賠償を支払え。」

訴訟提起 — 損害賠償2640万円

交渉がまとまらず、山秀商事が訴訟を提起。損害賠償請求額は2640万円。年間売上8000万円を基準に、侵害期間の利益相当額として算出。

2640万円(損害賠償請求額)

売上8000万円 × 利益率 × 侵害期間で算出された損害額

もし事前に調査していれば:「すし秀」が商標登録済みであることがわかり、「かっぽうすし秀」というネーミングを避けることができました。先行調査の費用は数万円。2640万円の訴訟リスクと比べれば、圧倒的にコストパフォーマンスのよい「保険」です。
商標侵害の損害賠償額の目安

商標法第38条は、損害額の算定方法を定めています。侵害者の売上高や利益をもとに算出されるのが一般的です。

年間売上損害賠償の目安備考
1000万円200〜330万円小規模な店舗
3000万円600〜1000万円地域の人気店
8000万円1600〜2640万円チェーン展開
1億円超2000万円〜大規模事業

※ 上記はあくまで目安です。実際の損害額は個別の事情により異なります。侵害の悪質性、侵害期間、利益率等により金額は変動します。

「もし自分のお店の名前が他社の商標を侵害していたら…」そんな不安がある方は、まず先行調査だけでもご依頼ください。

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IF WARNED

もし警告書が届いたら — 6つのステップ

ある日突然、相手方の弁護士から警告書が届くことがあります。慌てずに、次の手順で対応しましょう。

まず冷静に。すぐに応じない

警告書が届いても、すぐに要求に応じる必要はありません。記載された期限はあくまで相手方の要求です。ただし、放置も禁物です。

弁護士に相談する

商標に詳しい弁護士に、警告書の内容を確認してもらいましょう。相手の主張が正当かどうか、専門家の目で判断します。

相手の商標登録を調べる

相手が本当に有効な商標登録を持っているか、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で確認。登録が失効していたり、指定商品・役務が異なる場合もあります。

類似性を検討する

自分の使い方が、本当に相手の商標権を侵害しているか検討。称呼(読み方)・外観(見た目)・観念(意味)の3つの観点から類似性を判断します。

反論材料を探す

先使用権、普通名称、記述的使用など、反論の余地がないか検討。相手の登録に対して無効審判を請求できるケースもあります。

回答・交渉する

弁護士と方針を決めて、書面で回答。場合によっては使用中止、ライセンス契約、和解交渉など、最善の着地点を探ります。

知っておきたい反論材料:
  • 先使用権(商標法第32条):相手の出願前から善意でその商標を使用していた場合、一定の条件で使い続けられる
  • 普通名称:その名称が特定の商品・役務を指す一般的な名称として定着している場合
  • 記述的使用:品質、産地等を普通に表示しているに過ぎない場合
  • 商標的使用でない場合:ブランドの識別標識としてではなく、単なる説明として使っている場合
  • 無効審判:相手の商標登録自体に無効理由がある場合、登録を取り消させることができる

警告書が届いてお困りの方は、早めにご相談ください。弁護士・弁理士として、適切な対応をアドバイスいたします。

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Case 03 — 海外での冒認出願

クレヨンしんちゃん商標事件(中国)

中国 キャラクタービジネス 冒認出願

日本で大人気のアニメ「クレヨンしんちゃん」。そのキャラクター名と絵柄が、中国で無関係の第三者によって商標登録されてしまった事件です。

何が起きたのか

中国企業が日本側の権利者に無断で「蠟筆小新(クレヨンしんちゃんの中国語名)」を商標登録。衣料品やおもちゃなど幅広い商品区分で登録されたため、正規の商品展開に支障が生じました。

日本側はこの商標登録の取消しを求めて長期間争うことになり、多大な時間とコストを費やしました

「冒認出願」とは

他人の有名な商標やブランド名を、本来の権利者に無断で勝手に商標出願することを「冒認出願」といいます。特に中国をはじめとした海外で問題になっています。

教訓:海外展開を視野に入れている場合は、海外での商標登録も検討すべきです。特に中国では「先願主義」が厳格に適用されるため、早期の出願が重要です。マドリッド・プロトコル(国際登録制度)を使えば、複数国への出願をまとめて行うこともできます。

SEARCH EXAMPLE

先行調査でわかること — 「mon petit」調査事例

新しい商品名を思いついたとき、まず行うべきなのが「先行商標調査」。実際の調査例をご紹介します。

調査事例 — 先行調査の実例

「mon petit」で商品名を使いたい場合

「モンプチ」「mon petit」というフランス語(「私の小さい〜」の意味)は響きがかわいらしく、商品名やブランド名に使いたいと考える方は少なくありません。

調査の結果

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で「mon petit」を調査すると、すでに以下の企業が商標登録していることがわかります。

  • ネスレ(Nestlé) — ペットフード「モンプチ」で有名。動物用飼料など複数区分で登録済み
  • 明治(旧 明治製菓) — 菓子分野で「モンプチ」を登録
  • その他、飲食・化粧品分野でも複数の登録・出願あり

この調査から言えること

「mon petit」という名前を使って新商品を出そうとした場合、ほぼ確実に既存の商標権と衝突します。事前に調べずに使い始めてしまうと、後から名称変更を迫られたり、最悪の場合は損害賠償を請求される可能性があります。

教訓:「良い名前を思いついた!」と思ったら、まず調査。先行商標調査は出願前の必須ステップです。当事務所では、出願をお受けする際に必ず先行調査を実施し、リスクがある場合は代替案も一緒にお考えします。

QUIZ

あなたはわかる? — 商標の類似性クイズ

商標の類似性は、称呼(読み方)・外観(見た目)・観念(意味)の3つの観点から判断されます。実際に考えてみましょう。

Q. 以下の商標は、「すし秀」に類似すると判断される可能性があるでしょうか?

クリックして結果を確認してください。

かっぽうすし秀
「かっぽう」+「すし秀」の結合商標
スシヒデ
カタカナ表記に変更
秀鮨(ひですし)
語順が逆+漢字変更
SUSHI HIDE
英語表記

解説:「かっぽうすし秀」のように他の語を付加しても、「すし秀」の部分が独立して認識できる場合(結合商標の分離観察)は、類似と判断される可能性があります。カタカナ・英語など表記を変えても、称呼(読み方)が同じなら類似です。一方、「秀鮨」は語順が異なり、称呼も変わるため、類似とは判断されにくいでしょう。

※ 実際の類似性判断は、個別の事情を総合的に考慮して行われます。上記は一般的な傾向を示すものです。

DEFENSE STRATEGY

商標を守る3つの段階

商標トラブルを防ぐためにできることは、ビジネスのフェーズによって異なります。今のあなたに合った対策を考えましょう。

01

企画段階

ネーミングを決める前に先行調査を行う。これが最もコストが低く、最も効果的な対策。数万円の調査で、数千万円のリスクを回避できます。

02

販売開始後

すでに使い始めている名前でも、まだ間に合います。先行商標を確認した上で、出願を検討。競合の動きにも注意を払いましょう。

03

紛争発生後

警告書が届いてからでも、できることはあります。先使用権の主張、商標登録の無効審判、和解交渉など。ただし、早い段階の対策に比べてコストは大幅に増加します。

コストの比較:企画段階の先行調査 = 数万円 | 販売開始後の出願 = 十数万円〜 | 紛争対応 = 数百万円〜数千万円。段階が進むほど、対応コストは桁違いに大きくなります。

SEMINAR

セミナー・講演実績

本ページの事例の多くは、弁護士・弁理士 青山隆徳が講師を務めたセミナーの教材をもとにしています。

佐賀県知的財産セミナー
主催:特許庁・九州経済産業局 | テーマ:中小企業のための商標入門
知財マネジメントスクール(熊本)
商標法講義(商標の基礎・出願・権利行使・実務演習)
知財マネジメントスクール(商標調査・出願戦略)
商標調査の実務・出願戦略の策定
このほか、佐賀県の知財総合支援窓口で10年以上にわたり、中小企業の商標に関するご相談に対応しています。日常の相談業務で蓄積した知見を、本サイトでわかりやすくお伝えしています。

「うちは大丈夫」と思っていませんか?

事例で紹介したトラブルは、すべて「まさか自分が」と思っていた方に起きています。今のうちに、一度ご相談ください。

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